薬王堂気まぐれ通信使№705 2014-3-2
Yakuoudo Capricious Communications Satellite
先日、思いがけなくも本年度の植物写真コンテストにおいて会長賞をいただくことになりました。
薬用植物を中心とする日本の学者で組織された「うけら会」での植物写真コンテストです。
私は昨年から新入会員として認められたばかりです。
今年の応募者は12~13名でした。
私は広島で見られる「ヤドリギ」の画像を五枚ほど応募しました。
ヤドリギ(アカミヤドリギ・キミノヤドリギ)・ホザキヤドリギ・ヒノキバヤドリギ・マツグミ・オオバヤドリギに関する5点です。
その中で一点、オオバヤドリギの花の写真が今年の会長賞となったわけです。
オオバヤドリギ ヤドリギ科 Scurrula yadoriki
オオバヤドリギは島嶼部に見ることができます。
今までに私が確認したのは呉市で一箇所、その他に倉橋島で2箇所でした。
オオバヤドリギが見れるかどうか車を飛ばしました。
10年前、呉市では公園にある数本のソメイヨシノ(桜)に着いていました。
ところが今回行きましたら公園は整備され、ソメイヨシノの樹勢を損なうと思われたのかオオバヤドリギは全て取り除かれていました。
それで新音戸大橋(旧音戸大橋)を渡り倉橋島に入ります。
2006年に来た時には花が咲いていました。
当時の宿主も道路横にあるソメイヨシノ、オオバヤドリギは桜の木に繁茂し寄生していましたが今回は全く見られません。
ソメイヨシノは樹勢を削がれたためか、寿命を迎えたためか枯れ枝が目立ちます。
そばにツルグミが生えています。
横にはナワシログミも大きな実をつけていました。
ツルグミの垂れ下がる枝葉の中に一箇所だけ茶褐色の濃い部分↓がありました。
円内に赤褐色の濃い葉のオオバヤドリギがあります。周りはツルグミの枝葉
ツルグミとオオバヤドリギの葉は大きさも形態も非常によく似ています。
ただオオバヤドリギの葉裏には濃い茶褐色の星状毛がびっしりと生えビロード状をしています。
オオバヤドリギはソメイヨシノを離れ近くのツルグミに移って寄生していたのです。
その他のヤドリギの仲間は宿主はほぼ決まっています。
例外はあるものの、ヤドリギやホザキヤドリギはミズナラ、ヒノキバヤドリギはツバキ科のヤブツバキやヒサカキ、マツグミはアカマツに寄生しています。
オオバヤドリギはスギや桜、クスノキなどにも寄生していたのを見たことがあり、本を調べるとヤブニッケイやカエデ、カシ類などにも寄生するとあります。
実際、薬用で使われる桑寄生はオオバヤドリギ、その近縁種が当てられています。(図は中薬大辞典・小学館より)
桑寄生、日本の生薬問屋から入ってくるものはアカミヤドリギ・キミノヤドリギの枝葉を乾燥したものです。
中国では桑に寄生するものが薬用として珍重され、名前の語源にもなったのでしょう。
小高い丘に登ると瀬戸内海は綺麗でした。(2006年にやや右寄りからスケッチした同風景)
遠く大情島、江戸時代より軍馬の飼育がなされた。その前は小情島 倉橋島より
ヒサカキ・アカマツ・コバノミツバツツジ・コナラ・タブノキ・シャシャンボ・ヤブツバキ・セイヨウカラシナなどがあります。
海岸線を進み山を越えて南西側に車を走らせます。
倉橋島の岩山
一つ珍しいシダの仲間、シシヒトツバが海岸の岩場にありました。
ここは万葉の時代から人が住んでいたという歴史の町、海岸の砂浜が綺麗でした。
ここにマツグミがありました。
マツグミはあちこちで見ることができるヤドリギの仲間、この実を集めてトリモチを作ります。
ここの神社の境内で昔、クスノキに寄生したオオバヤドリギを見たことがあるのですが十数年前から消えています。
アラカシ・イタビカズラ・クロガネモチ・カクレミノ・モッコク・ネズミモチ・サカキ・タイミンタチバナ(花)・トベラ・ヤマモモ・ウラジロガシなどがありました。
アラカシの樹上に何か違う色の葉が茂ります。
オオバヤドリギです。
宿主のアラカシにオオバヤドリギが寄生しています。
ここにあったのか!
ひと枝、マツグミとともに持ち帰ります。
ヤドリギの仲間は枝や葉が節部で外れやすい特徴があります。(オオバヤドリギの側枝部・マツグミの側枝部)
それが手足の関節と関係があるかどうかわかりませんがヤドリギの仲間は関節の病気(神経痛・関節炎・リュウマチなど)によく使われてきました。
葉の裏表(オオバヤドリギ・マツグミ)や実(オオバヤドリギ・マツグミ)も比較してみましょう。
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